しごと再発見

藤池里美(一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団職員)
実施日:2013年7月19日(金)

柔軟に、自分のペースで働き続けること

講座中の様子

人生で「働き続けること」は大切ですが、シングルマザーの場合、子どもの成長や人生の状況にあわせて柔軟な働き方が必要になります。本人のスキルやキャリアだけではなく、時間や環境など自分の条件にあわせて柔軟にしなやかに「働き続ける」ためには、より多くの選択肢を考えられることも必要です。しかし、厳しい求人状況が続く中、就労先を見つけることは簡単ではありません。更に、就労や転職活動の経験の少ない若年シングルマザーの場合、自分の仕事選びについて、情報収集し、十分に考え、検討する機会がなかった、ということもあります。

このプログラムでは、早期にこの事業終了後の進路を考えるきっかけとして、実際の求人情報に触れ、情報収集し、本格的に就労先を探す前の気づきを得ることを目的としました。また、業種・職種・用語などの疑問、自分以外の人の応募企業選びに触れることで、仕事の種類や働き方の種類など、考え方を拡げるきっかけにも繋げたいと考えました。

応募したい求人を5つ見つけてみる

講座の一週間前、参加者には豊中駅で配布されている「Townwork」を2冊配りました。その中から応募したい求人をあらかじめ5つ選んでもらいました。見つからなければ他の求人媒体で自由に探しても構いません。ただし、考える上の条件はこのようなものです。

現状のスキルは考慮しない。来年3月を想定する。

たとえば「事務経験がないから無理」ではなく「事務経験が足りないから3月までに勉強する」と考えれば、「やりたい仕事」を諦める必要はありません。「今は難しい」けれど「いつかは」と考えることで、足りないものやこれから身につけるべきことが自然と見えてきます。

勤務条件は来年3月を想定する。

  • …こどもは保育所?学校?
  • …どこに住んでる?
  • …何日何時間働ける?
  • …お給料はいくら必要?

スキルと違い、働く条件はそれぞれの個人環境で決まっています。多くの場合、それらは個人の力では大きく変えることができません。このため、求める条件ははっきりと考えるようにしました。

みんなの選んだ求人を見て、選んだ理由を聞いてみよう

各自、5つ選んできた求人を元に自分の選んだ理由、なぜその順位づけなのかを発表しました。

その上で、それぞれの視点の違いや感じたことを意見として出し合いました。

好きなことをやりたい、できることから考えたい

発表に使用した切り抜き

各自切り抜きにして順位をつけて発表

まず「自分は○○が好きだから○○に関わる仕事がしたい」「これまで××をやってきたので、これならできると思う」という視点での仕事選びが見えてきました。一見、相反するような考え方の相違ですが、好きなことでなければ長く続けられない、と考えることも大切であり、自分のできる仕事なら働けるだろう、という冷静な分析も必要だという意見が出ました。どちらも、仕事を探すときには自問自答しなければならない問題です。また「好き」の理由が「業界」なのか「職種」なのかなど、理由を考えることで、仕事探しの幅が広がる可能性があることも話合いました。

条件、待遇で譲れないこと

以前働いたことのある会社の求人を見つけて選んだ人もいました。理由は「前の職種は合わなかったが、就労条件はとても自分には合っていた」からでした。また、職種や仕事内容だけではなく、社員登用制度の有無など、条件としてこだわる部分で選んだ人もいます。働き続けられるために、自分に必要な環境や条件などをシビアに考えることも大切です。

インターネットでの情報収集

Townworkだけでは志望する職種が見つからず、ハローワークのインターネットサービスで探してきた人もいました。職種によっては、求人情報媒体を変えてみることも大切です。なぜなら、それぞれの求人媒体の得意分野、対象、掲載条件などが多様で、一つの媒体だけではどうしても偏りが出てしまうためです。

みんな違う、でも、どれも大切

「条件」「好きなこと」など選択の理由は多様です。「イヤな仕事を我慢してると長く続けられなかった」など、各自の経験も話しながら、自分とは違った選択や、考え方も知るきっかけになるよう、自由な意見交換を行いました。自分以外の判断の仕方や視点を知ることができました。

みんなが気になること、たとえば「ブラック」

意見交換の間には、求人情報への疑問も多く出て来ました。不思議と、この疑問は参加者で共通しています。ここでは疑問点についても話合いました。

マイナス情報への敏感さ

求人情報を前にして「わからなかったこと」「疑問に思ったこと」を集めてみると、共通して意見として出てきたことは「悪い情報や噂への関心」でした。例えば

  • ハローワークなどの求人は「ブラック」が多い
  • 楽しそうなスタッフの写真が載っている広告は人間関係が悪い
  • 2号続けて掲載されている会社は人が定着していない
  • 社会保険のことを書いてない企業は保険にいれてもらえない

友人や知人から聞いたことがある、など、確証はない情報の中でも、特に「マイナス情報」への疑問が次々に出て来ます。ここで、これらの情報が「なぜそう言われるのか」「なぜその写真が掲載されているか」など求人情報の媒体毎の特色や作られ方、掲載条件などを説明しながら、意見交換をしました。

面接(イラスト)

例えば「社会保険完備」と、書いていないような場合でも、最初から「応募しない」のではなく、面接時に質問することもできるでしょう。また、求人情報に社員の活躍する写真を掲載し、より魅力的に見せようとすることは、ごく当たり前に行われています。職場の人間関係とは無関係です。ハローワークの求人は無料で掲載できる故に、多くの事業主が求人票を出しますが、その中には残念ながら法令遵守のされていない企業も、現実として存在していることがあります。ただ、これもすべてではなく、ハローワークでは求人公開時に職員から条件審査があり、場合によっては指導がなされていることはあまり知られていません。

情報を読み解くために必要なこと

このように、不確かな情報だけで自分から選択肢を狭くすることはもったいないことです。マイナス情報を簡単に信じるのではなく、調べてみることや考えることが大切だと伝えました。また、社会保険制度の基本的な知識、労働基準法の知識などは、求人情報を読み解き、就職活動を行う場合に大切であるということも確認しました。

研修参加者の感想
  • 他の人の仕事の探し方を知ることができた。人によって着眼点がちがうことと、その理由も聞けておもしろかったです。
  • 自分は職種にこだわっていたが、業界にこだわって探す方法もあることを知りました。
  • 今までは自分のスキルなど自分で条件を絞って探していたので限られていました。今回は条件をあまり考慮しないで探したので、今まで見なかった業界、職種も見ることができた。「この会社、この職種なんだろう?」という新しい発見がありました。
  • 自分の好きなこと、自分の趣味につながる仕事をさがす方法もあることを知りました。それが長続きする秘訣かもしれませんね。
  • 働いているうちに雇う側の思惑がわかってくるので、「こんな人は受からないのでは」と思いがち。条件があわないケースも多く、それであきらめることが多かったです。子どもがいない頃は何でも挑戦できましたが、子どもがいるので仕事を探す眼も制限がでてきました。民間の求人情報誌では探すのが難しい。行政のサポートを頼りにしています。
藤池里美プロフィール

藤池里美一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団、総務課主任。
製造、アミューズメント、人材サービスなど複数業界で総務、人事、広報などに携わる。自身の転職活動経験から自分探しや仕事探しの視点を、就業経験からは「雇用側」の視点を伝えることで、就活の役に立てばいいと考えて今回の講座を企画した。

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